インタビュー Vol.2

東京エレクトロン

Tokyo Electron

[掲載日] 2021.1.19

社会と人間の関係を考え、未来社会のデザインを目指す本プログラムは、東北大学「知のフォーラム」と、テクノロジー企業である東京エレクトロン株式会社の産学連携プログラムです。従来より知のフォーラムに特別協賛をしている東京エレクトロンは、本プログラムにおいてオーガナイザーとして参加しています。東京エレクトロンのお三方に、参加することになった経緯や本プログラムへの期待を伺いました。

  • やまぐち・みつゆき

    東京エレクトロンCSR推進室

    社会貢献活動の中で主に人材育成プログラムを担当。またSDGs達成のための企業の持続的成長につながるテーマを調査・企画中。社会課題解決のニーズを新事業につなげるアウトサイド・イン・アプローチを模索。

  • しま・ふみこ

    東京エレクトロン開発戦略部

    東京エレクトロンの中長期ビジョンの策定を担当。本プログラムで得られる、人々の望む未来社会に関する分野横断的な知見やシナジーを生かし、東京エレクトロンの中長期ビジョンの策定を目指す。本プログラムにおいてはコミュニケーションマネージャーを務める。

  • もりしま・まさと

    東京エレクトロン次々世代戦略企画プロジェクト

    東京エレクトロンの長期ビジネス戦略・技術戦略企画を担当。本プログラムを通し、未来社会において人々が真に必要とする半導体技術のあり方を多面的に理解することで、持続的成長を可能とする未来戦略の構築につなげることが目標。

このプログラムに東京エレクトロンが参画することになった
経緯を教えてください。

山口

私たち東京エレクトロン株式会社(TEL)は半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置 のメーカーです。本社は東京ですが宮城県や岩手県にも開発・製造拠点があり、お世話になっている地域をさらに応援したいという思いから、東北大学「知のフォーラム」を創設準備段階から全面的に支援してきました。

2013年から特別協賛として主に資金面から次世代の育成を目的に「知のフォーラム」を支援してきたのですが、2020年度のテーマプログラムにはTELもオーガナイザーの一員として企画・運営に携わっています。

山口

このテーマプログラムは、IoTに象徴されるデータドリブン社会やネットワーク社会の未来を考えよう、というもの。TELの事業はそのすべてに関わりがあります。我々はいわば「当事者」なんです。

森嶋

当社は主に半導体製造装置メーカーとして、半導体の性能を上げることが人の幸せ、社会の幸せにつながると思ってこれまでやってきました。でも、これからもずっとそれでいいのだろうか? たとえばIoT技術が進めば、便利になることも多い反面、個人の位置情報などが本人の知らないうちに第三者に把握される“監視社会”が生まれるかもしれない。「技術が進む」=「生活が便利になり、人々がハッピーになる」ではなくなってきています。

これからはTELも、技術のことだけでなくより広い視野かつ、より長いスパンで技術の進化と向き合っていくべきだと考えています。私は社内で「TEL Technology Vision」という長期ビジョン策定に関わるチームに所属しており 、この業務と知のフォーラムのプログラムには相関性があると感じています。

しかし東京エレクトロンはB to B企業ですよね?
ものづくりの上流にいる企業が末端のユーザーのことを考えるといってもかなり距離があるのでは。

森嶋

“上流”にいる企業だからこそ、エンドユーザーの変化に注意を払わなければ世の中の流れから取り残されやすくなるのではないでしょうか。私たちのお客さまである半導体メーカーさんから求められる装置を盲目的につくるばかりではなく、その先で人々が何を幸せとするのか、社会は何を求めているのかを知らないと会社としての進むべき方法性が考えられないですよね。半導体製造装置は非常に複雑な装置であるため、基礎研究から製品完成までおよそ10年の歳月を要します。なので10年先、20年先を見通さなくては間に合わない。ソフトウェア開発とはまったく違うタイムスケールなんです。

先を考えるとはいっても、TELの社員の多くを占める技術系の人間だけではそもそものインプットが限られてしまいます。でもこのプログラムではさまざまな立場、多様なバックグラウンドの方々と一緒に未来社会を議論する機会がもてることに大いに期待しています。

森嶋

実はこのプログラムの提案者は私なんです。せっかく知のフォーラムに特別協賛しているのだから、TELとして、研究者の方々や学生さんと何か一緒にできないかと思って。

半導体関連技術の共同研究は東北大学を含めさまざまな大学とおこなっていますが、そうした「今」「そこ」の具体的な技術開発についてではなく、長期的な視点で、広い視野で人間のwell-beingを考える研究プログラムを一緒にできないか、と知のフォーラムさんに提案したところ、東北大学の文系、理系から多様な研究分野の先生が集まってくださいました。本当に貴重な機会をいただいたと感謝しています。