第9回 脳機能と脳型計算機に関するRIEC国際シンポジウム

The 2nd International Symposium on
Designing the Human-Centric IoT Society

2020年12月5日
オンライン(Confit 及びZoom)

国際シンポジウム

2020年12月5日(木)に行われた第9回 脳機能と脳型計算機に関するRIEC国際シンポジウム(The 9th RIEC International Symposium on Brain Functions and Brain Computer)において、特別セッション(Special Session)として、本プログラムの国際シンポジウム「The 2nd International Symposium on Designing the Human-Centric IoT Society」を開催しました。

本プログラムのオーガナイザーである堀尾喜彦が座長を務め、同じくオーガナイザーの山口光行のほか、電気通信大学の阪口豊教授、東北大学学際科学フロンティア研究所のYueh-Hsuan Weng助教、立教大学の村上祐子教授が招待講演を行いました。講演はすべて英語で行われました。

オーガナイザーが各講演を紹介しつつ、シンポジウム全体を振り返ります。

 

Special Session

The 2nd International Symposium on
Designing the Human-Centric IoT Society
Chair: Yoshihiko Horio

Presentation

本プログラムのテーマ名を冠したこの特別セッションは、人間中心の技術社会に対して多様な角度からの意見を聴取し、理解を深める目的で企画した。

Introduction to the "Designing the Human-Centric IoT Society" Program
Yoshihiko Horio (Tohoku University)

本セッションは日本神経回路学会全国大会のサテライトシンポジウムとして開催されたため、まずは、日本神経回路学会会長の阪口豊教授(電気通信大学)に、計算論的神経科学・認知科学の立場から、運動制御の主観的側面についてお話しいただいた。

客観的な、すなわち誰にでも共通な、一般化できる計算としての運動制御に加え、注意の過程を通して人それぞれ固有の運動の学習や制御に関わる新しい視点を提供いただいた。これは本プログラムにおいての人それぞれに異なるwell-beingを考える際に重要である。

Incorporating cognitive process into computational motor control models---Towards an understanding of cognitive factors in executing motor skills
Yutaka Sakaguchi (The University of Electro-Communications)

次に、東京エレクトロン株式会社の山口光行氏に、産業界の視点からのお話をお願いした。テクノロジーの発展と人間の幸せの両立から、SGDs、ますます重要となるESGへの企業の貢献と企業価値、さらには科学の貢献に至るまで幅広い内容を俯瞰的に説明していただいた。これらは本プログラムの今後の方向性を探るうえで重要な情報であった。

Nanoelectronics technology for the sustainable planet
Mitsuyuki Yamaguchi (Tokyo Electron Ltd.)

本プログラムでは、社会実装も大きなテーマである。そこで、Yueh-Hsuan Weng先生(東北大学)に、AIに対するガバナンスをどのようにすべきかについて、特に法制の立場からご講義いただいた。

特にロボットを例に、人の立場からの価値(Human value)を考えることの重要性を学んだ。また、その方法の一つとして、倫理に基づく設計と、それと対をなして、将来における有効性(future-proof)を基準として考えた法整備により社会システムを設計する手法の2つの提示があった。いずれにしても、法律家と技術者の間のコミュニケーションが重要となることは明らかであり、本プログラムの重要性が再確認できた。

Design-centered AI governance Value-sensitive design and well-being
Yueh-Hsuan Weng (Tohoku University)

また、人間の幸せにとっては哲学的な議論も重要であると考え、立教大学の村上祐子先生に、物理的な「人」とIoT社会におけるエージェントとしての「人間」について語っていただいた。

IoTにより人は拡張されたエージェントとなるが、この際の様々な問題について議論された。将来、このような世界で人としての尊厳を維持するための技術を考えなければならず、例えば、一般社会からの信頼、倫理的なガイドラインとその厳守、研究計画の事前外部審査、用途の区別・限定が必要であることを再確認できた。

AI ethics: An interdisciplinary approach
Yuko Murakami (Rikkyo University)

以上のように、様々な立場から意見を頂戴した結果、本プログラムで議論すべき普遍性と特異性を考えさせられた。(本文執筆:堀尾喜彦)

Poster Session

2020年9月の協働ワークショップに参加した東北大学の若手研究者と学生のうち21人が、「未来社会デザイン塾」に参加して議論を発展させ、本シンポジウムで音声解説つきプレゼンテーションファイルによるポスター発表を行った。以下はその発表を日本語バージョンにしたものである。

グループ1:
人間中心な社会実現のための新たなコミュニケーション

菊地優志、竹室汰貴、小野雅也、高見豪、大友沙紀、倪澤遠

昨今われわれは生活の急激なオンライン化を強いられているが、人間中心の技術にはオフライン派とオンライン派の対立を緩和することが求められる。そこでわれわれは、オンラインで欠けている距離感や身体接触のような非言語的コミュニケーションに着目して、オンラインコミュニケーションに臨場感を与える技術を提案する。

グループ2:
人間中心の情報端末デザインのあり方

小口大輔、菅家由佳、千葉真、齋田涼裕、工藤海斗、坂本陽太郎

人間中心の社会を実現するためには、情報や機会の格差を無くすことが必要です。特にコロナ禍では、様々な活動が制約され、人々の心身の健康に影響を与えています。そこで私たちは、オフィスや学校、観光地に行かなくても、現実と同じような臨場感のある体験や交流ができる高度な仮想現実(VR)の実現を提案しました。

グループ3:
新たなAIと人類の概念に関する提言

藤本ありさ、チェ・ダウル、井上理哲人、高橋里奈、守部颯一郎、淺川芳直

AIと人間の共生における人間中心的デザインとは何か。もしAIと恋に落ちてしまったら、果たして結婚は可能なのか。そもそもAIを人のように扱って良いのか。AIと人類そのものの概念を哲学的に捉えなおすことで、未来の議論と可能性の拡大を試みる。この試みは、きっと予測不可能な未来に対応できる柔軟性を育んでくれるだろう。

グループ4:
移動式住居による ニューノーマルの生活様式

奈良拓也、田中聡、熊谷俊、佐藤有弥、福田佳祐

情報通信技術の発展に伴い、大量のデータ処理が可能となった。一方、COVID-19はオンライン会議、リモートワークなどのニューノーマルをもたらした。ニューノーマルは情報通信技術を基盤として実現したが、依然として価値観の差異による意見の対立という問題が残る。本発表では、AI搭載全自動移動型住居による移動の自由化を提案し、利点と欠点について述べる。

講演を振り返って

佐藤 茂雄(東北大学電気通信研究所 教授)

コロナ禍の中、オンラインで開催された国際シンポジウムでした。時差の関係などで外国からの参加者が少なかったことが今後の課題とはなりましたが、対面で実施した前回と同様、とても活発で有意義な議論が行われました。

著名な研究者の最新の研究成果や、未来社会デザイン塾学生のユニークなアイデアが披露され、多角的な視点からテクノロジーと人との関わりについて考え、認識を新たにする良い機会になったと思います。



山口 光行(東京エレクトロン)

企業の立場から半導体をはじめとしたナノエレクトロニクスができる貢献についてお話をさせていただきました。持続的社会は一企業だけで実現は難しく、グローバルで英知を結集する必要があります。特に多様な考え方を取り入れていく必要があります。この国際シンポジウムの場で未来社会について著名な先生方及びZ世代の学生と共に発表でき、光栄でした。科学と多様性が社会課題解決に貢献し、Well-beingな未来社会を実現できると思っています。