2022年5月29日

公共空間を活用したダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクト~パブリックスペースにおけるボッチャ体験モデルの確立に向けて~キックオフワークショップを開催しました

2022年5月29日(日)東北大学 片平キャンパス 知の館およびAIMR 2Fセミナー室を会場に、「公共空間を活用したダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクト~パブリックスペースにおけるボッチャ体験モデルの確立に向けて~」キックオフワークショップを開催いたしました。

本キックオフワークショップは二部構成で行われました。知の館で行われた第一部は、講演を主体としたシンポジウムで、オンラインで配信いたしました。AIMR 2Fセミナー室で行われた第二部では、5~6人のグループに分かれて関係者によるディスカッションを行いました。第二部終了後には、ビニールシートやガムテープで手作りしたボッチャコートで、簡単なボッチャ体験を行いました。

第一部では、東北大学 牛尾 則文 理事に開会のご挨拶を頂いた後、本プログラムのメイン・オーガナイザーである御手洗 潤 東北大学大学院法学研究科教授 より、プログラムの趣旨をご説明いただきました。「公共空間を活用したダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクト~パブリックスペースにおえるボッチャ体験モデルの確立に向けて~」は、知の創出センターが本年度より新たに開始した未来社会デザインプログラムの一環として開催されるものです。御手洗教授は、目指すべき未来社会として「ダイバーシティ&インクルージョンのまちづくり」を挙げられ、まちづくりとパラスポーツとの出会いがそのきっかけとなりうることをお話しされました。

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    牛尾 則文 氏 (東北大学)

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    御手洗 潤 氏 (東北大学大学院法学研究科)

最初の講演「まちづくりにおける多様性の確保と公共空間活用の価値」では、国土交通省 都市局 まちづくり推進課 課長、光安達也氏にお話しいただきました。光安氏によれば、都市の強みは、たくさんの人々が集まる公共空間として新しいもの・異なるものが出会い・交流する場であることです。さらに、都市がそうした強みを発揮し続けるために必要なのは、多様な人びとが安心してそこにいられると感じられる空間の寛容性です。この観点から、光安氏は、公共空間においてボッチャを行う意義は、公共空間にそうした寛容性をもたらすことにあると説かれました。 次に、日本財団パラスポーツサポートセンター推進戦略部の田口亜希氏より、「パラスポーツを通じた共生社会の実現」という題でお話しをいただきました。田口氏は、射撃競技でパラリンピック三大会連続出場を達成されたパラリンピアンであり、2020年東京大会招致でも重要な役割を果たされてきました。田口氏は、障がいを抱えることになった経緯や、その後射撃に出会うことになる経緯など、ご自身の体験も交えつつ、1948 年の「ストーク・マンデビル競技会」から2020年東京大会に至るまでのパラリンピックの歴史をたどり、パラスポーツを通じた共生社会の実現についてお話しくださいました。

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    光安 達也 氏 (国土交通省 都市局 まちづくり推進課)

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    田口 亜希 氏 (日本財団パラスポーツサポートセンター推進戦略部)

続いて、「エリアマネジメントの活動概要と公共空間でのボッチャ体験会の事例報告」との題で、植松宏之 流通科学大学経済学部教授 より、ご講演がありました。植松教授によれば、エリアマネジメントとは、「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」のことで、現代の都市づくりでは、人々の間の強調的な行動を促すような信頼・互酬性・絆などの社会関係資本を醸成することにより、都市を「つくる」のではなく、「育てる」ことが重要になってきているといいます。そのうえで、植松教授は、大阪梅田におけるエリアマネジメントの実践例等を挙げながら、多様な人びとが交流し、連携することのできる場としての都市空間を育てる試みの意義についてお話しくださいました。

最後の講演として、一般社団法人日本ボッチャ協会 事務局長の三浦裕子氏より、「日本ボッチャ協会の事業紹介【スポーツで垣根のない社会へ】」という題で、ご講演いただきました。三浦氏によれば、ボッチャの魅力は、障がいの有無にかかわらず誰でもできる「インクルーシブスポーツ」である点にあります。2021年開催のパラリンピック東京大会では、金を含む3つのメダルを獲得するなど、日本チームの成績は大会を経るごとに向上していることもあり、日本社会におけるボッチャの認知度も上昇傾向にあります。そうしたなか、日本ボッチャ協会は、スポーツで垣根のない社会を実現することを目指して、社会・地域・企業との連携事業や、「みんなでボッチャ!1万人プロジェクト」などの普及事業など、さまざまな試みを行っています。講演では、そうした日本ボッチャ協会の諸事業について具体的にご紹介いただきました。

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    植松 宏之 氏 (流通科学大学経済学部)

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    三浦 裕子 氏 (一般社団法人日本ボッチャ協会)

その後、一般財団法人 森記念財団の理事長であり、全国エリアマネジメントネットワーク会長でもある小林重敬氏より閉会の挨拶を賜り、第一部は終了となりました。

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    小林 重敬 氏 (一般財団法人 森記念財団)

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    会場の様子

なお、第二部では、オーガナイザーおよび関係者の方々でグループディスカッションを行い、その後に簡単なボッチャ体験会を行いました。ディスカッションでは、「まちづくり」と「パラスポーツ」の出会いから期待される成果や描ける未来について大変活発な議論が展開されました。短い時間ではありましたが、ボッチャ体験会も大変楽しく、ご好評いただけました。

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    ディスカッションの様子

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    ボッチャ体験会の様子

第一部は、オンラインで100名近くに及ぶ参加申込がありました。本キックオフワークショップが、パラスポーツを通じたインクルーシブなまちづくりと都市のダイバーシティについて皆様が考えるきっかけとなれば幸いです。たくさんのご参加ありがとうございました。