2023年12月1日(金) – 2日(土)

公開講座「東北沿岸地域の海洋生態系の変化と漁業・水産業の未来づくり —東日本大震災の経験からの学びを地域の未来づくりにどのように活かすか—」を開催しました

2023年12月1日(金) – 2日(土) にかけて、東北大学新青葉山キャンパス青葉山コモンズ講義室にて「東北沿岸地域の海洋生態系の変化と漁業・水産業の未来づくり —東日本大震災からの学びを地域の未来づくりにどのように活かすか—」を開催しました。 本イベントは、東北大学知の創出センター×アクサ協働プログラム「デジタル社会における保険イノベーション」の一環として、東北大学農学部・農学研究科、笹川平和財団と共同で開催したもので、スチューデントワークショップと公開講座を行いました。 1日半にも及んだスチューデントワークショップでは、大学院生を中心に約25名の参加者を得て、活発な議論が交わされました。 公開講座には、オンサイトでは30名程度、オンラインでは100名余りの参加者がありました。

TFC×AXA協働プログラムでは、社会課題を特定して、人が共に集い、多彩な切り口から議論する「場」の設定を目標においています。 その活動の一環として、様々な社会課題を学生の目線で議論するスチューデントワークショップを開催してまいりました。 今年度は、協働プログラムの3年目節目として、域の海洋生態系の変化と漁業・水産業の未来づくり」をテーマに開催いたしました。 2011年3月11日に起きた東日本大震災は、東北沿岸での漁業・水産業、海洋環境に、またその地区で暮らす人々に甚大な被害を与えました。 それから、12年が過ぎ、多くの方々の努力で復興へ向かっております。 震災からのライフラインの復旧、まちの復興への道のりや課題を学び、人々が幸せを感じ、強靭で持続可能な地域社会の未来を実現するために、本学学生をはじめ、指導にあたる教授陣、地域社会の多様な担い手に議論を行っていただきました。

スチューデントワークショップは、東北大学農学部・農学研究科の学生を中心としつつ、東京海洋大学、東京大学の学生の方、またNPO法人のフィッシャーマンジャパン、 笹川平和財団海洋政策研究所、およびAXA生命株式会社の社員のかたなどの参加のもとで議論をいたしました。 全体の進行を東北大学農学研究科の藤井豊展先生に進めていただき、東北大学農学研究科の片山知史先生、フィッシャーマンジャパンの津田祐樹様、 AXA生命の雨森康彦様から、生態系の変化、復興後の復元の速さ、海洋温暖化、創造的復興の反作用、過剰投資、消費者から海を変える、 インパクト投資と企業活動のチェックなどについて情報提供をしていただき、それらについて議論を行いました。 最後は学生の参加者が考えた課題の解決について発表が行われました。

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    藤井 豊展 氏
    (東北大学農学研究科 准教授)

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    片山 知史 氏
    (東北大学農学研究科 教授)

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    津田 祐樹 氏
    (株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役)

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    雨森 康彦 氏
    (アクサ生命保険株式会社 資産運用部 部長)

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    グループ討論の様子

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    グループ討論の様子

スチューデントワークショップを踏まえて、2月2日の午後から一般の方へ向けた公開講座が開催されました。

最初に、開会の挨拶として、北澤春樹農学部長・農学研究科長と阪口秀笹川平和財団海洋開発研究所所長からご挨拶をいただきました。 北澤先生からは、近年科学の技術が進歩しているなかで基礎の研究から社会実装がはじまっているが、まだまだ社会で解決しなければならない課題が山積している。 東日本大震災の復興が進んでいるなかで、多くの課題が残っている。 この解決のためには、分野の異なる人々が集まって、近未来に向けてアイデアを提供しあい解決の糸口を見出すことは重要である。 近未来を幸せでレジリエントな社会の構築をめざす必要がある。 そのためにもこのように多様な人々が集まって課題解決のための議論をすすめることは重要であるという発言がありました。

阪口所長は、COP28に参加のために、ドバイからビデオメッセージをいただきました。 東日本大震災の後の地域の未来づくりをどう生かすか?この大震災を経験した東北の知でこのようなワークショップが開催されることがとても重要だと思う。 阪口所長も阪神、神戸大学で教鞭をとっていた時に、自分の学生を失ったことなど悲しい体験をしていた。東日本大震災でも同じような経験をされた方が沢山おいでだったと思う。 しかし、人間は強く、震災の後にはよりよい状況を作っていこうという向上心がある。以前より暮らしやすいという願望をもって進んでいる。 これをさらに深く未来社会に対応するために何が必要かを考えていきたい。そのための革新的提案を行い、社会への実装を行いたい。 今回の公開講座の成果を期待したいというご挨拶をいただきました。

開会挨拶にひきつづき、アクサ生命株式会社土井恵執行役員から3年間のAXA×TFC協働プログラムの締めくくりを振り返っていただいた。 アクサ生命株式会社のご紹介とサステナビリティの取り組みについてご説明をいただきました。 アクサ生命の使命はよき未来のために地域環境を守って社会的課題を解決するサステナブルな社会への貢献のために、地域社会の持続可能社会をめざし、サステナビリティの課題解決をリードしていきたい。 サステナビリティ戦略としては、気象変動と環境、健康と病気予防、社会的不公平とインクルージョンを考えている。 本日は気象変動と環境についての活動として、グリーン投資とカーボンフィットプリントの達成を中心としてお話しをいただきました。

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    会場の様子

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    北澤 春樹 氏
    (東北大学大学院農学研究科長・農学部長)

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    阪口 秀 氏
    (公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所 (OPRI)所長)

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    土井 恵 氏
    (アクサ生命保険株式会社 執行役員 チーフサステナビリティ& シンプリフィケーションオフィサー)

この後、2つの講演がありました。
最初の講演は、木島明博東北大学名誉教授による「東日本大震災からの復興-東北マリンサイエンス拠点形成事業 (海洋生態系の調査研究) を通して—」と題する講演でした。 東日本大震災からの復興 東北マリンサイエンス拠点形成事業 (海洋生態系の調査研究を通しての活動についてお話しでした。この震災では、まずどんなことがあったか明らかにしないといけない。 津波の襲来状況、地震・津波直後の女川町の状況、拠点形成の事業、なぜこのような事業がおこなわれなければならないかについて10年間の事業活動についてお話しをいただきました。 そのなかで多くの環境データが得られそれをCDにまとめてある。このデータを将来の環境データとして生かしてもらいたいということで締めくくられました。

第2の講演は、Michael Huang 笹川平和財団 海洋政策研究所 (OPRI) 主任研究員による「ブルーファイナンスで持続可能な海洋の発展を支える」と題するものでした。 第4期海洋基本計画 (総合的な海洋の安全保障と持続可能な海洋構築) が令和5年4月28日に閣議決定されている。 そのなかで、総合的な海洋の安全保障、持続可能な海洋の構築、海洋の産業利用の促進、科化学的知見の充実、海洋におけるDXの推進、海洋人財の育成など着実に推進すべき施策が提言されている。 今回の講演では、海洋政策としてOcean Transformation (OX), Blue Economy, Blue Finance, Blue Impact Financeについての紹介と提案がなされました。

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    木島 明博 氏
    (東北大学 名誉教授)

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    黄 俊揚 氏
    (公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所 (OPRI)主任研究員)

2つの講演の後、スチューデントワークショップ並びに公開講座で講師を務めていただいた方々によるパネル討論が行われました。 モデレーターは片山知史東北大学農学研究科教授が務めてくださり、パネラーとして、雨森 康彦アクサ生命保険株式会社 資産運用部 部長、津田祐樹 (株)フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役、 Michael Huang笹川平和財団 海洋政策研究所 (OPRI)主任研究員、青木優和東北大学大学院農学研究科教授、大越和加東北大学大学院農学研究科教授に加わっていただきました。
パネル討論は、スチューデントワークショップを踏まえての議論が行われました。 頭に片山教授からスチューデントワークショップでの議論の内容についてご説明があり、それをもとにして、 豊かさとはなにかをキーワードとして、(1)12年目の魚層の現状、生態系と水産業の課題、(2)将来理想の漁業と水産業の実現にむけての2つにテーマを絞ってパネリストと議論を行いました。

最後は、本ワークショップおよび公開講座の実現に尽力くださった、尾定誠東北大学名誉教授より、今回のスチューデントワークショップから公開講座についてのコメントをいただきました。 尾定先生からは、このような課題に、学生、研究者、社会人や企業など多様な方々が集まり議論をする重要性が強調されました。 この協働プログラムでは様々な議論が活発になり、多くの学生や研究者・市民の方々に有意義な場となったのではないかと思います。たくさんのご参加ありがとうございました。

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    パネル討論の様子

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    尾定 誠 氏
    (東北大学農学部・農学研究科 名誉教授)