2023年11月5日

「宇宙と健康」を開催しました

去る2023年11月5日(日) に市民講座「宇宙と健康」を開催しました。

宇宙環境では微小重力や宇宙放射線などのストレスにさらされ、ヒトの健康状態に様々な影響を及ぼします。 宇宙環境が健康に及ぼす影響を調べるために、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟を利用して宇宙マウスミッションが行われています。 これまで、飼育装置開発の難しさなどの理由から、マウスの「宇宙旅行」を達成することは米国やロシアなど限られた国でしか実施できませんでした。 このハードルを克服するために、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、マウスの宇宙飛行のための総合的な小動物飼育システムを構築しました。 このシステムを採用した日本初の第1回宇宙マウスミッション (2016年) では、12匹の雄マウスの打ち上げに成功し、そのすべてが「きぼう」に約1か月滞在後、無事に地球に帰還しました。 このミッションにより、骨密度や筋肉量の減少などの加齢様変化が宇宙飛行中に大幅に促進されることが実験的に証明されました。 さらに、第3回宇宙マウスミッション (2018年) では、世界初の遺伝子ノックアウトマウス打上げ・約1か月の長期飼育・全匹生存帰還に成功し、ストレス防御経路の主要な調節因子であるNrf2の欠失が、 「きぼう」に滞在するマウスの健康にどのような影響を与えるかを明らかにしました。 これらのミッション実施の解析が進み、分子レベルでのサイエンスデータが続々と学術論文として発信されてきています。

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    山本 雅之 氏
    (東北大学東北メディカル・メガバンク機構 機構長)

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    高橋 智 氏
    (筑波大学 教授)

今回の市民講座は、環境応答研究の最新の研究を議論する第6回環境応答国際シンポジウムの最終日に開催されました。 オンサイト会場として東北大学医学部 星陵会館2階「星陵オーディトリアム」と、ライブ配信会場として仙台市天文台1階「加藤・小坂ホール」を繋ぎ2会場で開催されました。 環境ストレス応答研究のパイオニアでいらっしゃる本学の山本先生、筑波大学の高橋先生から宇宙空間でのマウスミッションの概要などわかりやすく説明していただきました。 また、「きぼう」宇宙マウスプロジェクトを担当されたJAXAの芝様、岡田様からはプロジェクトの概要とともに実物を用いて小動物飼育システムについてご説明いただいきました。 今回ファシリテーターとしてご参加いただいた金井宣茂宇宙飛行士からは宇宙空間での分刻みのスケジュールの中でどのように研究を行っているのか具体的なお話がなされました。 今回の市民講座は幅広い年齢の方々にご参加いただきました。また、たくさんの質問が飛び交い盛会裏に開催することができました。 参加者には宮城県発 “宇宙食ゼリー” がプレゼントされ、興味深そうに召し上がっている方も見受けられました。 知のフォーラムでは、このような魅力あるイベントを今後も開催して参りたいと思っております。

たくさんのご参加ありがとうございました。

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    東北大学医学部 星陵会館2階「星陵オーディトリアム」の様子

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    仙台市天文台1階「加藤・小坂ホール」の様子