2026年9月4日
東北大学知の創出センター×東京エレクトロン共創プログラム
知のフォーラム プレミアム 「Human–Centered AIが拓く多様な社会 —脳科学とAIが出会う『人間理解』の最前線—」を開催しました
2026年9月4日(金)、知のフォーラム Premium「Human–Centered AI が拓く多様な社会 —脳科学とAIが出会う『人間理解』の最前線—」を、東京都港区のドイツ文化会館 OAGホールにて開催しました。本イベントは、東京エレクトロン株式会社と東北大学 研究推進・支援機構 知の創出センターによる共創プログラムとして開催されたものです。
近年、生成AIをはじめとするAI技術は、研究や産業だけでなく、私たちの日常生活にも急速に広がっています。文章や画像の生成、情報整理、意思決定の支援など、これまで人間が担ってきたさまざまな活動にAIが関わるようになりました。
こうした中、本フォーラムでは、人間を中心に据えた「Human–Centered AI」をテーマに、脳科学、産業、創造性などの異なる視点から、AIの可能性と、その先にある「人間とは何か」という問いについて議論しました。

登壇者、杉本亜砂子理事・副学長

パネル討論の様子
はじめに、東北大学大学院生命科学研究科の筒井健一郎先生よりご講演いただきました。
筒井先生からは、自動車の運転支援やスマートフォンの顔認証、生成AIなど、AIがすでに日常生活のさまざまな場面に入り込んでいることが紹介されました。また、人間の脳における神経細胞やシナプスの働きと、人工ニューラルネットワークとの関係について解説いただきました。
一方で、現在の言語AIが人間を理解しているように見えることと、人間と同じように「理解」していることは必ずしも同じではないことも指摘されました。
さらに、脳活動のデータを機械学習によって解析し、人の心の状態を推定する研究や、脳・自律神経の活動、発話、表情、動作などを組み合わせ、人と人とのコミュニケーションを支援する研究についても紹介されました。AIを人間に近づけるだけではなく、AIを用いることで人間そのものへの理解を深める可能性が示されました。
続いて、東京エレクトロン株式会社 装置インテリジェンス開発部 部長の茂木弘典氏より、半導体製造の現場におけるAI活用についてご講演いただきました。
半導体の構造や製造工程が複雑化する中、製造装置では温度や圧力、ガス流量など、多くの条件を細かく設定する必要があります。講演では、機械学習を活用して膨大な条件の中から適切な製造条件を探索する事例や、複数の製造装置から取得したセンサーデータを解析する取り組みなどが紹介されました。
また、AIを活用するためには、データだけではなく、熟練者が持つ経験やノウハウを適切に文書化し、「どのように考え、どのように判断しているのか」という思考プロセスを蓄積していくことが重要であると説明されました。
AIだけで課題を解決するのではなく、人間が培ってきた専門知識や経験とAIを組み合わせることの重要性について考える講演となりました。

筒井 健一郎 氏
(東北大学大学院生命科学研究科 教授)
茂木 弘典 氏
(東京エレクトロン株式会社)
第2部では、「脳科学とAIが拓く人間理解と未来」をテーマにパネル討論を行いました。
登壇者は、デジタルハリウッド大学 学長の藤井直敬先生、東京エレクトロン株式会社の茂木弘典氏、東北大学大学院情報科学研究科/加齢医学研究所の細田千尋先生です。モデレーターは、東北大学 知の創出センターの倉田祥徳が務めました。
討論に先立ち、藤井先生からはAI時代における「創造性」について、細田先生からは「AIは人のつながりになり得るのか」という視点から、それぞれ話題提供いただきました。
藤井先生は、違和感や怒り、偏愛、モヤモヤといった人間の感覚に着目し、クリエイティビティを「現実を編集する力」と表現しました。また、自らの意思を持ってものをつくり、それを社会に届け、その結果に責任を持つことの重要性についてお話しいただきました。
細田先生からは、人の心理状態や行動、脳の情報などから個人の特徴を捉える研究や、人が幸せになるような「つながり」の中にAIやロボティクスがどのように関わり得るのかについて紹介されました。
パネル討論では、「AIは人間を理解できるのか」という問いを出発点に、AIによる「理解」と「予測」の違い、熟練者の判断のAIへの継承、AI時代の創造性などについて議論が交わされました。
また、AIが一定水準のアウトプットを容易に生み出せるようになるからこそ、人間自身が「何を良いとするのか」を判断し、自分の意思を持ってより良い方向へ導くことが重要になるという意見も示されました。さらに、AIが出した結果をどこまで信頼するのか、AIの提案によって問題が生じた際の責任を誰が負うのかなど、AIを社会で活用していく上での課題についても議論しました。
最後に、「10年後、人間とAIの関係はどのようになっているのか」「その社会で私たちは何を大切にして生きていくべきか」という問いについて、それぞれの登壇者から展望が語られました。

藤井 直敬 氏
(デジタルハリウッド大学 学長)
細田 千尋 氏
(東北大学大学院情報科学研究科/加齢医学研究所 准教授)
AIによって、私たちができることはこれからさらに広がっていくと考えられます。一方で、AIをどのように活用していくのかを考えるうえでは、人間自身が「何を目指すのか」「何を良いとするのか」「どのような未来をつくりたいのか」という意思を持つことが重要です。本フォーラムは、AIの可能性を入り口に、これからの人間とAIの関係について改めて考える機会となりました。
ご登壇いただいた皆さまならびに、ご参加いただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。