10周年を迎えて

Message

新たな知の創出に取り組む場を提供し、
未来社会へ向けた価値ある「総合知」のために


 知の創出センターは今年で設立10周年を迎えることができました。

 本センターは、日本初の本格的訪問滞在型研究施設である「知の館」(TOKYO ELECTRON House of Creativity) を擁する組織として2013年に設立されて以来、人類社会の共通課題の解決および先駆的研究領域の創出を目指して、さまざまな取り組みを行ってまいりました。

 その中心を担ってきたのが、テーマプログラムです。これは、数学、自然科学、工学、人文・社会科学など、あらゆる学術分野を対象としたプログラムで、世界一線級の研究者を交え、人類社会にとって今後重要な課題となりうる諸テーマについて国際的かつ学際的な検討を行ってまいりました。プログラムには、ノーベル賞 / フィールズ賞級の研究者にも毎年ご参加頂いております。その数は、10年間でノーベル賞受賞者は18名 (のべ21回)、フィールズ賞受賞者も6名 (のべ7回) に及びます。このように、知の創出センターは、日本の知を担う研究者たちが、国際的に著名な研究者とともに新たな知を切り拓くことができる場を創出してきました。

 学術的な知に加え、社会に貢献できる実践的な知の形成も、我々の重要な関心事です。これから30年後、50年後の未来社会を見据えて現在の社会がどのような方向へ進路をとるべきかを提示することは、現代の大学に求められる使命のひとつとなっています。本センターでは、さまざまな企業連携プログラムを実施し、これからの未来社会デザインについて検討してきました。たとえば、東京エレクトロン株式会社との協働プログラム では、「人を幸せにするIoT社会のデザイン」を検討してきました。その後継プログラムとして、2022年度からは、「デジタル×サステナブル社会のデザイン」を実施しております。また、アクサ生命保険株式会社との協働プログラムとして、「デジタル社会における保険イノベーション」を実施し、デジタル情報技術の発展を背景に保険の未来について議論しています。

 本学は、建学以来、「研究第一」「実学尊重」「門戸開放」の理念を掲げてきました。知の創出センターの活動は、まさにこの理念に則るものです。その活動は、多様な背景をもった人々に門戸を開くことで、先駆的で新しい学術知や、社会に貢献できる実践知を拓くことができる場を創出することを目的としています。今後も、人類社会の共通課題の解決および先駆的研究領域の創出を目指して邁進してまいりますので、引き続いてご支援いただけるようお願いいたします。

知の創出センター センター長
小谷 元子